不倫をしても慰謝料をとられないんだと思ったら大間違い

誤解を招くタイトル

最近不倫の慰謝料の最高裁判例が出て話題になっています。
ニュースでも報じられましたが、これらのタイトルが、いちいち、誤解を招くようなもので、なんだかなあという気持ちになりました。

具体的には以下の通りです。

“不倫相手に離婚の慰謝料請求できず” 最高裁が初判断 ・・・NHKニュース

離婚慰謝料 特段の事情ない限り、配偶者の不倫相手に請求できず 最高裁が初判断・・・毎日新聞

不倫相手に「離婚慰謝料請求できない」最高裁 ・・・読売新聞オンライン

不倫相手には請求できず=離婚の慰謝料、初判断-最高裁・・・時事ドットコムニュース 

タイトルしか読まないと、「既婚者と不倫しても配偶者から訴えられることはないんだ!」と勘違いしてしまいますよね。

「不倫しても安全!ラッキー!!」と喜ぶ不届き者や、「裁判所はなんて非常識なところなんだろう」と湯気を立てて怒っているうっかり屋さんもいるかもしれません。

 それらはすべて誤解です。

 今後不倫をした人は慰謝料請求されないの?

結論から言いましょう。 

今後も、不倫をしたら、慰謝料請求されてしまいます。
もし、自分の夫なり妻が不倫をしたら、自分の配偶者と不倫の相手、どちらでも訴えて慰謝料を請求することは可能です。

最高裁判例が出た後も、これは変わりません。 

不倫相手を訴えるのは3年以内

ただし、不倫相手を訴えるにあたっては、いろいろと制約があります。

まず、不倫の事実や不倫の相手を知った時から3年間で時効になります。

例えば、夫の不倫を知った妻が、ショックを受けて頭が混乱し、しばらく泣き暮らしながら、「人を憎むなんて無駄なことは止めよう」と自分を必死にごまかしてなだめ続けたものの、やはり腹の虫がおさまらず、不倫が発覚してから5年経過した後にようやく相手を訴えようと思ったとします。

しかし、時効により慰謝料の請求ができないのです。

不倫の慰謝料は低い 

また、不倫の慰謝料はあまり高額ではありません。

弁護士に依頼して内容証明を送りつけ、高めにさばを読んで500万円とか300万円の慰謝料を請求したとします。
しかし、届いた相手方もびっくりして必死でネットで情報検索したり、弁護士事務所やら弁護士会、市役所などの法律相談に行きますので、いわゆる「不倫の慰謝料の相場」を知ります。
結局、150万円とか100万円とか、そのあたりの額で示談をすることになります。

お金がない相手の場合には、さらに少額の金額しか払えないので、もっと示談金が下がります。

 「不倫」ではなく「離婚」を理由とする慰謝料

こういった次第なので、不倫された人から依頼を受けた弁護士はひと工夫をします。 

不倫が理由で夫婦関係が破たんしてしまったような場合には、不倫相手をすぐに訴えるのではなく、配偶者との離婚を済ませた後に、あるいは離婚訴訟で夫と一緒に不倫相手のことも訴えるのです。
その際には、「不倫」だけではなく、「不倫の結果としての離婚」についてまで広げて責任を追及します。

不倫相手に、「お前たちが不倫をしたから訴える」というのではなく、「お前たちのせいで離婚になったので訴える」というわけです。

何それ?
どっちも同じじゃないの?
何が違うの?

そう思った方もいるでしょう。

しかし、これが大違いなのです。

「離婚」を理由とした請求は一味違う

まず、「不倫」だと、不倫された時期から3年を過ぎている場合に時効になってしまいますが、「離婚」は現在進行中の事態なので時効にはかかりません。 

また、「不倫」は一時的な裏切りとされて慰謝料が低額になることが多いですが、「離婚」まで行くと、配偶者との関係が法的にも終わってしまうのでダメージはさらに大きく、慰謝料も高額になります。

例えば、「不倫」を理由とした場合には100万円~150万円程度の慰謝料で済むことが多いですが、「離婚」まで行くと、2倍以上の請求が可能になります。

今回の最高裁の判断

今回の最高裁判例では、不倫相手に慰謝料請求する場合に「不貞」を理由にするのはいいけど、「離婚」については夫婦で決める事柄なんだから不倫相手には責任はないとされたのです。 

不倫された方にとっては納得いかないかもしれませんね。