命を奪わずに肉を食らう未来

日本の一部の漁村で行こなわれているイルカ漁に対して、

海外(特に欧米)の動物愛護団体がしょっちゅうクレームをつけている。

 

日本人の中には、

「古くからの日本の文化なんだから外国がガタガタ言うな」

と反発する人も多い。

 

そうだよなという気もするし、

日本人としてその心情はよくわかる。

 

なので、この反発については、

特にあれこれいうつもりはない。

 

ただ、イルカ漁を擁護する意見の中でも、

ちょっと違和感のあるものがある。

 

具体的にいうと、

 

「欧米人だって牛の命を奪ってステーキとか食べてるじゃん。

イルカがかわいそうだというなら牛もかわいそうじゃない?

矛盾していない?」

 

といった意見だ。

 

かならず出てくる意見なんだよね。

 

私的には、この意見って

いまいち説得力がないように思えるんですよ。

 

確かに、昔は、日本人の方が仏教の影響もあって、

肉食を避けており動物に対しても慈悲深かったと思う。

 

一方、欧米人というかキリスト教徒は、

人間以外の動物は神様からの人間へのギフト

という結構人間中心の認識だった。

 

ただ、現在の欧米人が、

自分たちも牛や豚を食っているにもかかわらず、

イルカを食うのを止めろというのは、

もっと実践的というか

実務的発想に基づいていると思うんだよね。

 

牛や豚は一大産業になっていて流通量も桁違い。

今、これを止めてしまったら、

他に動物性たんぱく質をとる代替手段もなくなる。

経済的にも大混乱は必至。

なので、肉牛もやめましょうってのは現実的ではない。

 

なので、できるところから、

大混乱を生まないところから

手を付けていこうっていう

実践的な感覚で言ってるんじゃないかなと。

 

まずは、イルカのような

手の付けやすいところから手を付けていく。

だけど、彼らの最終的な狙いは、

肉食自体の大革命にあるように思う。

 

我々は、「命に感謝して美味しくいただいています」

という深遠な仏教的態度を持つことで良しとして、

そこで歩みをストップしちゃう。

 

だけど、欧米人って次々と

この世界を大きく改築していくからね。

 

何十年かかるか分からないけれど、

いずれは、彼ら欧米人は、牛や豚も食わないでいい

そんな未来を作ってしまう可能性がある。

 

いわゆる、クリーンミート、人工肉。

 

クリーンミートが実現すると、

資源の浪費が減る。

 

食肉用の家畜を飼うよりも、

エネルギーや水の消費が桁違いに少なくていい。

 

食糧問題、エネルギー問題がかなり改善する。

 

肉の価格も今よりだいぶ安くなるはず。

 

また、人間に感染する伝染病も多くは家畜に由来するけれども

家畜の飼育を止めれば、そういった伝染病も激減する。

 

それに、何よりも、他の生き物の命を奪わなくて済む。

 

肉牛は、普通に人間に懐くし、

豊かな感情、好奇心、高度な知能を持っている。

 

そういった肉牛の苦しみと食を

引き換えにしなくても済むんだよね。

 

正直、今の状況で肉を食うという喜びを

断念して菜食主義者になる根性は私にはない。

 

しかし、技術の進歩により、人工の肉でも、

おそらくはナチュラルな肉と味や食感いずれも

遜色ないレベルになる。

 

そうしたら、ナチュラルな肉に

こだわる理由はなくなるよね。

 

勝手な未来予想をしてみる。

 

まずは、クリーンミートの普及は、

ヨーロッパが始めるだろうね。

 

まずは、EU政府は人工肉を普及させるために、

人工肉の産業の株式を畜産農家に与える。

 

そうやって、畜産業従事者の生活を守りながら

スムーズに人工肉産業を拡大していくだろう。

 

明治時代の日本政府による殖産興業政策みたいだね。

 

アメリカでの人工肉の導入は、

少し遅れそうだね。

 

アメリカは、ヨーロッパのように

畜産農家に利益を還元したりせずに、

大企業が利権をしっかり確保しようとするはず。

 

その結果、古くからの畜産農家

人工肉を扱うメジャー企業の深刻な対立が起こる。

 

ただ、いずれは、人工肉の方が

ずっと安いコストで流通するので、

従来の畜産農家はコスト的に太刀打ちできなくなるはず。

 

そして、最終的には人工肉が普及する。

 

日本はどうかな。

 

アメリカよりもさらに遅れるんじゃないかな。

 

日本人は、新しいものに対する抵抗感や

違和感を強く持つ国民性の持ち主なので、

最初のうちは、

「自然の恵みで命をつなぐことが本来の人間の生きる姿」

とかなんとかいって、導入が遅れるだろう。

 

ただ、最終的には、ナチュラルな肉が

世界的に道楽品扱いになる。

そしてコストがどんどん上がっていく。

やがて、我々庶民に手が届かなくなり、

富裕層しか口にできなくなるときがくる。

 

そのときに世論がガラッと変わる。

 

「食のために命を奪うのは良くない。」

という考え方が一気に普及する。

 

最後は、ナチュラルな肉を口にする富裕層が

世論から動物虐待する極悪人扱いされるはず。

 

そうやって、日本でも、全ての肉は、

人工肉に置き換わるだろうね。

 

その時に、従来の肉を食いたがるのは、

よほどのマニアだけになっているんじゃないかな。