わが子からの暴力と警察の介入
元事務次官が家庭内暴力を起こす自分の息子を刺殺するという事件がありました。
わが子に手をかけざるをえなかったお父さんがどんなに絶望的だったかを思うと、言葉はありません。
また、安易に「他に何か手段はなかったのか。どんなことがあっても他人だろうが我が子だろうが、人を殺してはダメだ。」と批判することもできないと思っています。
家族から日常的な暴力を受けている人は、極限的な状況に置かれていると思うからです。
ただ、あえて言わせてください。
「息子からの暴力に苦しむ親に、殺人の他に採りうる手段が全くない」というのは間違いです。
他に手段はあります。
まず、例えわが子から親に対する暴力であっても、きちんと診断書をとって警察に相談して被害届を出すなどすれば、暴行なり傷害罪で逮捕してくれます。
確かに、よほど大きなけがでない限り、一発で実刑になることはありません。
しかし、執行猶予がついて釈放された後、再び、親に暴力をふるったら、実刑にもなりますし、服役もします。
「家庭内の問題だから警察は全くとりあってくれない」などということはありません。
「警察は何か起きないと動かない」とよく言われます。
その通りです。
しかし、わが子から暴力を受けている時点で、「何か起きている」と言えるわけです。
プライバシーの問題がありますのでここで細かく書くことはしませんが、私の周囲にもそういうご家庭はありました。
現実に、そういう実例を知っています。
そのご家庭では、ご両親ともに、「血のつながった我が子だろうと、甘い対応はしない。」と腹をくくっておられました。
こうやって親が腹をくくっている場合、警察は頼りになります。
多くの場合、子供の態度が一時的に優しくなったり反省の態度などを示すと、親の方が「もういいのではないか?」「もう一度子供を信じてみよう」という感じで、途中でグダグダになってしまうのです。
もちろん、警察に相談に行くこと自体が高いハードルですし、恥ずかしいという思いもあるでしょう。
しかし、どうしようもないぐらい追い詰められたとしたら、やはり、逮捕してもらうしかないのではないでしょうか。
刃物をもってわが子と対峙する覚悟、殺人者になってしまう覚悟があれば、警察に逮捕してもらう決意の方がハードルが低いはずです。
もちろん、言うは易しで、自分が同じ立場になった場合に、スムーズに警察に相談し、証拠などを準備して逮捕してもらうことができるか?情に流されてなあなあになってしまわないのか?などと言われれば、「自分なら絶対にできる」とまでは言えません。
ただ、刃物を手にする前に、そういう手段もあるということを、頭の片隅に置いといても損はないと思います。
できれば、マスコミも、コメンテーターのくだらない議論を垂れ流すぐらいだったあら、そうやってわが子の暴力から逃れることができた実例を取り上げたり、あるいは、役に立つ対処法をきちんと取材して伝えるべきだと思うのです。
追伸・警察に家族を逮捕させる方法を報道させるのがはばかられるのであれば、家族の暴力から逃れるための夜逃げの仕方とかを教えてもいいですね。
素人コメンテーターの「殺したお父さんの気持ちもわかる」とか「一人で死ね」みたいな一人語りを聞いても何の役にも立ちませんからね。