東国原英夫の醜態とそれに拍手喝采する視聴者

ゴゴスマという番組で、日韓関係がテーマとして扱われていました。

番組内で、東国原英夫さんが、韓国政府側に立つ女性韓国人コメンテーターの金慶珠さんに対して、「黙ってろお前は!黙っとけ。この野郎、しゃべりすぎだよ、お前は」と怒鳴ったことが物議をかもしています。

パワハラだとか、見苦しいとして批判も殺到していますし、一昔前なら放送事故レベルの展開だと思うのですが、一方で、「よく言った!」と拍手喝采する残念な人たちもいます。

 

私も個人的には、韓国政府や文大統領のやっていることには言いたいことはたくさんありますが、それを考慮しても、この東国原さんの対応はないだろうと思います。

 

民族差別とか、女性蔑視という観点以外にも、(プロの芸能人でありながら)テレビでの役割を放棄していると思うからです。

 

まず、今のご時世、韓国を批判するコンテンツは視聴率が取れます。

そこで、この手のワイドショー、ライト系報道番組でも、韓国ネタが多いです。

 

しかし、テレビ制作サイドには、ある悩みがあります。

韓国人側の意見を代弁してくれるコメンテーターの確保が大変なのです。

韓国人コメンテーターがテレビで韓国を擁護する意見を述べると、スタジオで他のコメンテーターから袋叩き状態。

フルボッコにされます。

特に、韓国を批判する側のコメンテーターの中には、役割であることをすっかり忘れて、怒りの感情のスイッチを入れたまま、唾を飛ばし、青筋を立てながら、相手を糾弾する姿勢になっちゃう人もいます。

 

余談ですが、こういう糾弾調で感情的に話す人って、以前は左翼側の人に多かったのですがね。今では、保守コメンテーターの多くが、かつての左翼的メンタリティになっちゃっていますね・・・

 

日本側で韓国を否定する愛国コメンテーターには、講演依頼や書籍の出版などの仕事がたくさん舞い込みますが、韓国側のコメンテーターなどをやっても、そういったおいしい仕事に結びつくわけでもなく、番組内で罵倒されてしんどい思いをし、日常生活でも知らない人から後ろ指をさされたり厳しい目でにらみつけられたりなど、いいことがありません。

 

まあ、一昔前、橋田寿賀子などの嫁姑モノドラマで、悪役姑を演じる女優が、日常においても一般視聴者から憎しみの目を向けられるようになったらしいですね。

今でもそのころと視聴者のリテラシーがあまり変わっていないわけです。

 

そういうわけで、韓国人側のコメンテーターも、テレビへの出演を拒むようになるわけです。

 

ただ、韓国人サイドのコメンテーターがいなければいないで困るわけです。

日本人側、愛国側のコメンテーターばかりが、韓国に対する批判や不満を述べるだけでは、メリハリがつきません。

「韓国政府腹立つよね。」「そうだよね。」と確認しあうだけでは、パンチが足りません。

バトルの形式をとり、憎まれ役、敵役がいないと盛り上がらないわけです。

(まあ、そういった他国への憎悪や怒りを前提とした意図で番組を作るって姿勢もどうかと思いますし、視聴者を舐めているように思えてなりませんが、現実に視聴率が取れる以上、テレビ側としては作りたくなるのでしょう・・・)

 

そこで、テレビ局のスタッフたちは、韓国人コメンテーターとしての出演依頼をしに方々に回るわけですが、相手から困惑の表情で断られ、足を棒にして頭を下げまくって、出演してくれる人を探しまわっているという状態が続いています。

 

というわけで、金慶珠さんは、番組制作サイドにとっては、いまだに韓国側の立場でコメントを続けてくれる貴重な人材なのです。

金さんが、視聴者をイラっとさせる意見を言うたびに、テレビ制作側は、「いいぞ。いいぞ。面白くなるぞ!」とガッツポーズをとっているはずです。

 

で、番組の構成としては、必然的に「日本側の意見 VS 韓国側の反論」という構図になりますが、日本側の意見を言う人たちは多人数、韓国側の反論を述べる人は少人数(とか1人だけ)なので、どうしても、他のコメンテーターよりも、金さんのように韓国側の反論を述べる人の発言時間が長くなります。

 

で、冒頭の東国原さんの暴言です。

 

東国原さんの行為は、テレビで憎まれ役を演じる俳優を、善玉役の主演俳優が、アドリブでガチで殴ってしまうような行為です。

 

東国原さんが、世間の空気やノリを読んで、ウケるだろうという計算のもとになされているのは明白です。

しかし、彼は、テレビ局のスタッフの苦労やテレビでの役割分担をきちんと考えているのでしょうか。

 

また、役割でやっているとはいえ、罵倒される側も生身の人間ですから傷つきます。

 

これらを全部、分かった上でやっているのであれば、東国原さんはこの上なく卑怯だと思います。

拍手喝采している人たちも、正直、アホだと思います。

 

 

追伸・悪ノリではなく真っ当にコメントする有識者もほぼ壊滅状態ですし、今の視聴者のリテラシーを考えると、こういった番組制作はそろそろ潮時ではないでしょうか。