驚くべき刑事の取り調べテクニック

ペラペラとウソを言う容疑者にどう対応するのか

本記事は、某司法関係の知人に聞いた話を書きます。 

刑事は容疑者を逮捕して取り調べます。
もちろん、罪を認めて素直に自白する容疑者もいれば、黙秘して何も話さない容疑者もいます。
いろいろです。 

中には、ぺらぺらと嘘八百を並べるタイプの容疑者もいます。

こういう容疑者の場合、刑事ドラマだと、刑事が机をたたいて、「いい加減なことばかり言いやがって。ふざけるな!!」と怒ったりする展開になります。

 ところが、現実の刑事がそういう対応をするかというと、どうも違うようです。 

現実の刑事は、ニコニコしながら、「そうかそうか。それで?」という態度に出たりするのです。

すると、容疑者は、まるで優しい刑事に接待されているかのように、気持ちよく嘘八百を並べます。

泳がせて嘘をつかせることもある

例えば、容疑者が犯行時刻には駅前のパチンコ屋に行っていたという話をしたとします。

しかし、その日はパチンコ屋は定休日です。
もちろん、刑事は、こんなウソはあっさりと見破ります。
意外なことに、それでも、刑事は、それを容疑者に指摘したりせず、そのまましゃべらせるのです。 

取り調べでは刑事による聴き取りが終わると聞き取った内容を「調書」という書面にします。
容疑者がしゃべった内容と食い違いがないかどうか容疑者に確認してもらうために刑事が読み上げ、容疑者に署名させ、指印を押させます。

容疑者が並べ立てた嘘八百も、きちんと「調書」という書面になるのです。

そんなウソだらけの「調書」を一体何のために作るのか。
果たして、使い道があるのか。

それが、立派な使い道があるのです。

裁判で威力を発揮します。

裁判になった後の話

裁判になると、容疑者は「私は事件の日、別の場所にいました。」と述べて犯行を否認します。

裁判に先立つ弁護士との打ち合わせで、容疑者(被告人)は事件当日パチンコ屋が休みだったことに気付いています。

そこで、裁判では、容疑者は弁解の内容を修正します。


「取り調べの時にパチンコ屋に行っていたというのは勘違いでした。そのパチンコ屋には何回か行きましたから、別の曜日に行ったときと記憶がごっちゃになっていました。事件があった日は、ショッピングモール内の映画館で映画を見ていました。」

 

そこで、検察が「調書」を出すのです。

調書には、ご丁寧に次のように書かれています。


「事件があったとされる日に、私はパチンコ屋に行っていました。

そのパチンコ屋には過去3回ほど行きました。

事件のあった日にも行っています。

その日にパチンコ屋に行っていたことは絶対に間違いないです。

他の日と混同しているということはありません。

なぜ間違いないのかというと、事件のあった日は毎週楽しみにしているドラマの下町ロケットの最終回の放映日だったので、間に合うようにパチンコを止めて帰ろうと一瞬だけ思いました。

しかし、結局、やめるタイミングがつかめずに最後までパチンコを続けてしまいました。」

 

刑事は取り調べで、このように、ウソをそのまましゃべらせて、詳しく念入りに記録に残しておくわけです。

これで弁解ができなくなります。

容疑者は次から次へとウソばかりをいう人物であることが証明されるのです。

あとは、何を言おうが、裁判官から、容疑者の弁解は信用してもらえなくなります。

刑事は、容疑者と言い争いや口喧嘩をして勝とうとはしません。

むしろ、できる限り気持ちよくしゃべらせて、自滅させていくのです。

実は、怖いのはこの先

犯人が取り調べで嘘八百を並べたあげく有罪になるのはある意味、自業自得です。

問題なのは、潔白の人が犯人だと疑われた場合です。 

潔白の人であっても、犯人扱いされると、取り調べの時にパニックになって、疑いを晴らそうと刑事に対して必死に弁解を始めます。

人間の記憶力はいい加減ですから、ウソをついているつもりがなくても、記憶違いから、弁解に誤りが混じることはおおいにあります。

刑事が取り調べの時に記憶違いや誤りを指摘してくれればいいのですが、泳がされてそのまま「調書」が作られてしまうと・・・ 

考えただけでも怖いですよね。