事業での借金を返せない人を悪党扱いするってどうなのよ

炎上した芸人の子供時代のエピソード

某芸人がテレビで子供時代の貧困話をしていました。
父親が事業に失敗して家族で夜逃げし、借金取りから逃れるために転校を何回も繰り返したという内容です。 

これに対して、ネットではこの芸人と家族を批判する声が殺到しました。

金を返せないやつはクズだ
お金を貸した人がかわいそうだと思わないのか

と。 

これを聞いて非常に複雑な気持ちになりました。

私の知人には中小企業の経営者が何人かおり、ある程度、経営者側の事情も聞かされているからです。 

友人知人にお金を借りて返せなかったというケースならば、貸した方も大変な目に遭いますから、貸した人に同情する気持ちも十分にわかります。

きわめて人間的な感情です。

しかし、一歩引いてみると、別の見方もできます。

借金はいかなる場合でも絶対に返さなければいけないとしたらどうなるか

そもそも、借金の踏み倒しが絶対に許さないとしたら、どうなるでしょう。
返せるまで、罪人のように責め立てられるとしたらどうでしょう。 

誰も事業をやらなくなってしまいます。
失敗した場合が恐ろしすぎますから。

誰も事業をやらなければ、従業員として働きたい人の職場もなくなってしまいます。

結局、日本国民全員が自営業者になるか、あるいは国営企業しかなくなってしまうでしょう。 

我々に給料を払ってくれている職場も、誰かが借金をして事業を始めたからこそ生まれたのです。

幸い、我々従業員はそういったリスクを負っていません。
誰かが背負ってくれているからこそ、従業員になれたのです。

だとすると、事業主に過大なリスクを負わせるのもどうかなあと思うのです。 

実際、旧共産圏では破産や借金の踏み倒しを認めていませんでした。
その結果、共産圏はことごとく崩壊し、失敗しました。

イスラム圏も破産が認められないところが多いようで、破産を認める先進国ほどは、経済発展ができていません。

貸す側にも対抗手段はある

そもそも銀行などの金融機関はお金を貸す時に利益を得ます。

数パーセントの確率で借金を返せない可能性があるから、利息を取るし、担保などの工夫をして、金融のテクニックも上がっていくのですね。

時々お金を返せない人がいるのを見越して、貸主は利息というものを取ります。

時々事故や怪我、病気が起きることを見越して保険会社が加入者から保険料を取るのに近いです。

借金が焦げ付いたら他の借主からの利息で填補するのは、事故の保険金を保険料でカバーするようなものですね。

社会の仕組みというものは、うまく作られています。 

確かに、友人知人が人情なり人間関係からお金を貸してくれたような場合にお金を返せなくなるのは、本当に気の毒としか言いようがありません。
頼まれて保証人になった人も本当に気の毒です。 

ただ、銀行などの金融機関やプロの金貸しからの借り入れの場合、返せなかった人を罪人のごとく批判するのは、どうかなあと思ってしまうのですね。

一生懸命経営努力をしていたにもかかわらず、不運にも失敗することはありますからね。

日本の中小企業の弱さ

日本の中小企業の多くは収益性が低く、苦戦しているところが多いです。
事業を起こして10年以上継続できる会社は少数派と言われています。

 展望が悪くなってきたらすぐに会社をたためばいいのですが、日本の中小会社の社長の多くは会社をつぶしてはいけないと頑張ってしまいます。 

社員に給料を支払えないと申し訳ないとか取引先に迷惑を掛けられないという気持ちから、無理に会社を続けて状況を悪化させます。

経営状況が悪化すると、社長は自分の報酬を生活できるギリギリまで落とします。
従業員の半分以下とか、生活保護ラインまで報酬を落として土日返上で毎日16時間働き、奥さんや家族も無給で会社のために働いたりします。

働きながらも赤字は累積していき、ついに会社は倒れます。 

従業員にしか分からない苦しみがあるように、事業を起こした者にしか分からない苦しみもあるのです。

経営者も従業員と同じように、強者でも何でもないのです。