コロナでも生活保護者に現金支給するなという主張
コロナ騒動で経済が停滞し生活困窮者が出ていることから、国民に現金を一律支給する案が出ている。
しかし、ベストセラー作家の百田尚樹さんは、生活保護受給者には現金支給するなという主張をした。
これ自体、ぎょっとするような主張ではあるが、よくよく聞いてみると百田さんなりの理由はあるようだ。
百田さんに言わせると、コロナで現金支給するのは生活保障をするためのところ、生活保護受給者は収入が減らないので支給の必要がないという。
そして、公務員なども同様に収入減少はないので現金の支給はするなと述べている。
なるほど。
私も趣旨にはおおむね同意なのだが、なぜ「現金支給は収入減少がありそうな人達に限定すべき」という無難な言い方にしないのか。
「生活保護者」を例として挙げることが必要なのだろうか。
それは、やはり「生活保護者を排除!」的なセンセーショナルな言い方の方がインパクトや訴求力があるからだろう。
しかし、マスコミやら一部の作家って、面白さやインパクトばかりを狙って副作用のことを全然考えていないですね。
名指しされた生活保護者の人たちの自尊感情がどれだけ傷つくのかについて、全然配慮していないし、生活保護者のことはサンドバッグにしてもいいと思っているのだろうか。
マスコミが「トイレットペーパーの在庫はあります。買い占めは止めましょう。」といいつつ、絵的に面白いから空の棚を映すという行動に出るのに似ている。
視聴者がテレビで空の棚を見た結果、トイレットペーパーの買い占めが進んでしまうのである。
マスコミ関係者の本能なのだろうな。
絵面や字面重視で、自分の言葉からどういう副作用が生じるのかを全く考えていない。
浅はかである。
また、収入減少がないことを理由に生活保護受給者に支給しないのなら、年金受給者や(休業中でもいつも通り給与が支給されるであろう)大企業の従業員についても、支給はやめるべきということになる。
もともと収入がなかった専業主婦へも現金を支給すべきではないということになるだろう。
また、中小企業の従業員でも、実際に収入が減るのかどうかはケースバイケースである。
後から納税記録などを見て、コロナ騒動後も収入減少がなかったと判明した場合には、いったん支給した現金を後から政府へ返還させるべきということになる。
なにしろ、収入減少がない人へ支給すべきではないという主張なのだから。
しかし、こんな細かいことを実務的にやれるのだろうか。
それとも、形式的にわかりやすい生活保護者と公務員だけを排除すべきとでもいうのだろうか?
百田さんは話は面白いし勘もいい人だと思うのだが、やはり実務家ではないのだな。
追伸
自民党の小野田美紀議員は現金支給は日本国籍に限るべきと主張しているらしい。
しかし、これは実に頓珍漢な主張である。
外国籍であっても日本人同様に税金は納めているし、収入減少がありうるのは日本人と一緒。
なので、小野田の主張はほとんど受け狙い以上の意味はなく、実務的にも行政で採用される可能性はゼロである。
小野田という人がいままでまともな主張をしたという記憶は一度もないのだが、今回もひどいものである。
一部のリベラルが小野田と百田の発言を同列扱いにしているが、さすがにこんなのと一緒にされたら、百田氏が気の毒である。