社員に「経営者視点を持て」という経営者が覚悟すべきこと

社員に無茶なことを言う経営者

これからは従業員であっても

経営者と同じ視点を持つべきだ!


そういう言葉を聞いたことがありませんか。

 

自分の会社の従業員に大して

そういった要求をする社長もいますよね。

 

では、「経営者と同じ視点」というのは

いったい何のことなのか。

 

いまいち分かりにくいですが、

そういうことをいう社長は、

おそらく次のようなことを

言いたいのだと思われます。

 

従業員として与えられた仕事を淡々とこなすだけではなく、
もっと広い視点をもって仕事をすべきである。

 

社会から、世の中から何が求められているのかを探れ。

 

自分たちは世の中に何を提供すべきなのかを考えよ。

 

提供するためにはどんな能力が必要なのかを考えよ。

 

今の会社のメンツでそれができるのかを考えてみろ。

 

できないとしたらどうすればできるようになるのか

アイディアを出して実行せよ。

 

等々・・・

 

大変ですね。。。

従業員の皆様に深く同情いたします。

 

ひどい場合には、社長が、自分の愛読するビジネス書や

有名な経営者の書いた本を課題読書として

従業員に強制的に読ませるという例もあるようです。

 

日々の仕事で疲れ果てている従業員としては、

これだけ働かせておいて、
俺たちにもっと要求するのかよ

だったらもっと給料よこせ

と言いたくなりますよね。

 

往々にしてそういうことを言う社長の多くは

経営者視点をもつことで社員側に生じるメリットを

社員側に丁寧に説明していません

 

それどころか、経営者視点を持つことが

会社にとっての有益であるのかさえも

わかりません。

 

単に、社長が思い付きで適当なことを

言っているだけのようにしか

思えなかったりします。

 

経営者視点を持つことになんのメリットがあるのか

それがわからない社員に経営者視点を持てというのは、

無理な要求なのです。

 

実は役に立つ経営者としての視点

実は、経営者としての視点を持つことは役に立ちます。

簡単な例で説明します。

 

あなたが新たなバージョンのソフトウェアを

取引先の企業に採用してもらったとします。

 

ところが、どういうわけか旧バージョンから

新バージョンのソフトウェアに

データが引き継げなかったとします。

 

困惑した取引先企業からどうしたらいいのか?と

助けを求められます。

 

そのようなときに、どうすべきなのか

あなたの会社では、具体的な

オペレーションが決まっていません。

 

あなたは、上司に相談することなく、

自分の休日や終業後の時間を使って

取引先企業にいってデータの手入力での

引継ぎを行いました。

 

いわゆる「神対応」です。

 

あなたの対応は正解なのでしょうか?

 

「お客様を第一に考えた行動は素晴らしい」

そういう意見もあるでしょう。

一方で、

「勝手な前例を作ると、今後同様の事例について

全部同じ対応をしなければならなくなるので

勝手なことはすべきではない」

という意見もありうるところです。

 

答えが割れるのです。

どちらの回答が正しいのかは、

実は、会社の経営方針によります。

 

徹底したアフターサービスや、

きめ細かい対応をうたい

同業他社よりも割高な料金を取っている会社の場合、

イレギュラーな事態に対して、

コスト割れしたとしても対応しなければ

会社のブランドに傷がつきます。

神対応」をすることで、

会社のサービスの価値を高めます。

 

一方で、

 

安さやコストで勝負している会社の場合、

せいぜいが返金対応ぐらいにとどめ、

毅然と顧客を突き放すしかない場合もあります。

神対応」をしていたらコスト勝負できなくなりますし、

もっと最悪なのは、「神対応」をしている評判が広まって

今後、同じレベルでのサービスが

広く期待されてしまうことです。

ることもと、いままでと同じコストでの

販売は不可能になります。

 

会社のポリシーや経営戦略によって

正しい対応は変わるのです。

 

日常的なオペレーションを超えた対応については、

経営という視点がないと正解が出せない場合があるのです。

 

もちろん、イレギュラーな事態については、

全部、会社の上の人間が対応するというのもありでしょう。

 

しかし、従業員ひとりひとりが経営者的視点を

ゆるぎなく持っている会社は、強くなるのは必然ですよね。

 

経営者が覚悟すべきこと

従業員であっても経営者視点を持つことは、

会社にとって確実にメリットになりますし、

従業員自身の市場価値も上がります。

どの会社でも欲しい人材ですよね。

 

ただ、一方で、従業員に経営者視点を求める以上は、

経営者側も覚悟すべきことがあります。

 

従業員が経営者視点を持つことで、

従業員は会社を自分の人生を共にするパートナーではなく、

自分がステップアップするための踏み台であったり、

自分自身の価値を高めるための手段として

考えるようになるのです。

 

会社にとって有益な人材になればなるほど

その人は会社に依存せずに生きていけるようになるのです。

 

当然ですね。

 

なので、ベンチャー企業などでは、従業員に対して、

「経営者としての視点を持て」

というと同時に、

「うちの会社を利用して

どんどんステップアップしていけ」

などというようになっていますね。

 

その通りだと思います。

 

経営者視点を持ちつつ、なおかつわが社に骨をうずめよ

というのは、あまりにも虫がよすぎる要求なのです。

 

社員に経営者視点を持てというからには、

経営者側も、

 

「従業員をステップアップさせた結果、

その従業員が独立や転職を選ぶ場合にも

ちゃんとアシストして喜んで送り出す」

 

そういった覚悟が必要になるでしょう。